CHANGE YOUR SEATシートが変わればクルマも変わる

Motorsport

2022年7月富士スピードウェイにおいて、国内最大規模のワンメイクレース86/BRZ Cupの第1大会が開催された。本大会よりTOYOTA 86とSUBARU BRZそれぞれが新型車に変わり、各メーカーから発売されている競技向け車両のカップカーが集結した。大会はアマチュアドライバーが中心のクラブマンシリーズと国内屈指のプロドライバーが参加するプロフェッショナルシリーズの2つにクラス分けされている。初戦となる富士大会。クラブマンシリーズのエントリー台数は50台(うちSUBARU BRZは5台)。プロフェッショナルシリーズのエントリー台数は39台(うちSUBARU BRZは4台)。
TOYOTA 86とSUBARU BRZは、周知のとおり兄弟車であり、トヨタとSUBARUが共同開発するスポーツカーである。ゆえに初代のTOYOTA 86と SUBARU BRZには、それほど大きな性能差はなかった。しかし2台目となったTOYOTAのGR86とSUBARU BRZは、それぞれの味付けを大きく変えてきた。一般的には、TOYOTA GR86がスポーツドライビングを愉しむ味付けを重視し、SUBARU BRZはSUBARUが強調する安心と安全を感じる味付けを重視したと言われたりもする。実際にはどうなのか?何をどのように変えたのか?
この86/BRZ Cupで使用されるナンバー付き競技車両のカップカーも、同じレースで使用される車両ではあるが、それぞれの味付けが異なっている。例えばGR86は、アクセルを踏んだときのレスポンスがとても気持ち良い。スポーツカーならではの吹け上がりを感じる。一方でBRZは、マイルドである。4000rpmぐらいまでの吹け上がりがとても上質であると感じる。共に、初代から比べれば圧倒的に高トルクを感じ、特に1速から3速まで驚くほど気持ちのよい加速である。わかりやすく言えば、高速道路のサービスエリアから本線へ合流するまで、FRスポーツカーらしい加速を感じることができる。本線に合流したあと、法定速度での巡航域までいくと、そこからはGR86もBRZも一気に落ち着いた感じの上質なスポーツカーとしておさまっていく。日本国内の法定速度であれば、それ以上でも、それ以下でもない、ちょうど良い走りだと感じる。

ただこのGR86とBRZの味付けの違いに大きな落とし穴があった。86/BRZ Cupプロフェッショナルシリーズにおいて、BRZは大きな欠点を露呈してしまった。このワンメイクレースに使用されるカップカーは、競技用ではあるが、あくまでナンバー付きの車両であり、レース車両ではない。一方で、プロフェッショナルシリーズに参戦するプロドライバーのドライビング技術、使用するタイヤのハイグリップ。この組み合わせは、想像を遥かに上回る。おそらく開発段階においても認識されていたであろうが、それでも十分ではなかったかもしれない。サーキットのメインストレートからフルブレーキ、タイヤのハイグリップを捉えて、ステアリングを大きく切り込んでいく。あるいは左右に連続するS字カーブをアクセルのオンとオフをコントロールしながらステアリングをクイックに切り返していく。そのとき、ドライバーのステアリング操作をアシストする制御機能がミスマッチを生じる。いわゆる急激に「重ステ」症状を起こしてしまう。ステアリング操作が突然効かなくなってしまう。2.4L、235馬力、リミッターの効いた車両で、富士スピードウェイでは2分1秒台。鈴鹿サーキットでは2分26秒台。岡山では1分45秒台で走るプロドライバーのドライビング技術と速度域で発生するこの症状は想像しがたい。これはTOYOTA GR86にはない、SUBARU BRZの死角であった。
あくまで、国内屈指のプロドライバーが、サーキットという環境で、ワンメイクレースに使用される超ハイグリップなタイヤを使用して、タイムアタックをした場合に起こるものだ。
2022年シーズン、4台のBRZでプロフェッショナルシリーズに参戦したRECARO RACING TEAMは、それをずっと背負いながら戦い抜いた。

2023年の開幕までに何かが変わるだろうか。


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