Motorsport
GR86/BRZ CupのRd.6が鈴鹿サーキットで開催された(2024年10月5日〜6日)。RECARO RACING TEAMは、前戦の岡山大会に続いて4台体制で挑んだ。プロフェッショナルシリーズは、906号車の近藤翼選手と909号車の小暮卓史選手。クラブマンシリーズには、270号車の江原選手と938号車の吉田選手。
レースウィークが始まって、チームが現地入りしたのは木曜日。その木曜日は台風の影響もあって、時折豪雨となって荒れた天候であった。鈴鹿サーキットも安全を考慮して走行と中断の調整を繰り返した。RECARO RACING TEAMの4台もチームとしてのメニューを調整しながら週末のレース本番に備えた。
このレースウィークで、改めて近藤選手の独特な感性と天才的なレース準備のプロセスを経験した。前戦の岡山大会で失敗したLSDの仕様選択。今回は鈴鹿サーキットということで"強いデフ"の仕様選択は間違いようがない。ただ、その強いデフの確認走行がレースウィークの木曜日には必要であった。なぜなら翌日の金曜日は、通常2〜3本の走行機会があるものの、今回は専有走行(レース予選を想定した特別スポーツ走行枠)1本のみだからであった。その専有で最終調整をするためにも、木曜日の練習走行が必須であった。岡山大会での失敗を繰り返さない。その想いがあった。激しく雨が降り、強くなったり、弱くなったりを繰り返すコンディションの中で、近藤選手は着実に自分の役割を消化した。強い雨の中でも、"強いデフ"の状態をしっかりと確認することができたのだ。実はこれがこのワンメイクレースでは当たり前ではない。トップカテゴリーのレーシングマシンであれば、マシンの状態を確認するということは、プロであれば普通かもしれない。でもこのワンメイクレースで使用する競技車両は、ナンバー付き市販車ベースの緩いマシンである。プロであっても、マシンの状態をつぶさに把握するのは非常に難しい。コンディションが整った状態であれば、プロは間違いなく仕事をする。でも激しい雨でコースコンディションも荒れた状態。さらにこのワンメイクレースで使用する競技タイヤは、Newの状態と計測1周したタイヤではグリップ力がとてつもなく変化する。つまり予選のタイムアタックを想定して、強いデフの状態を確認するには、実際に予選で使用するNewタイヤを履き、そのグリップ力で試したいのが本音である。アタックタイム1秒に20台以上が入り、コンマ1秒を競う予選となると、プロであっても本番により近い状態で事前に確認したいはずである。ただ近藤選手は、常にドライなら、ウェットなら、鈴鹿なら、Newタイヤなら、そのイメージがより高い次元でできるのである。それが近藤選手が強い理由なのかもしれない。最悪のコンディションにも関わらず、その仕事をしっかりと行った近藤選手は、それを証明するかのように、金曜日の専有走行で3番手のタイムを軽々と叩き出した。それも、いつものとおりコンマ何秒かの余白を残した余裕のアタックだった。
RECARO RACING TEAMを発足して6年目。プロもジェントルマンもさまざまなドライバーのレースウィークの走り方を見てきた。どのドライバーもベストである。素晴らしいドライバーばかりを見てきた。ただ近藤選手は、そのドライバーのどのタイプにも当てはまることがない。独特の感性である。この感性が、チームに新しい成長を促す。新しい意識を生み出す。ただ興味深い。
ジェントルマンドライバーとしてクラブマンシリーズに参戦した270号車の江原選手。昨年よりずっと安定して良い状態でレースを楽しんでいるように見える。今年は、岡山・鈴鹿・もてぎの3戦というスポットではあるが、このワンメイクレースの参戦実績はかなり豊富だ。鈴鹿大会では、見事2度目のベストパフォーマンス賞(決勝グリッドから最終順位そもっとも上げた選手)を受賞した。
最終戦のもてぎは11月に開催される。期待をもって楽しみである。