Motorsport
2022年9月 GR86/BRZ Cup 第3大会の十勝レースにおいてRECARO RACING TEAMの906号車が競技規定に不足しているとして失格処分を受けた。これにより十勝レースおよびそれまでのレースで獲得したポイントを剥奪、さらにドライバー・車両・エントラントの3つが十勝以降の2大会に対して出場停止となった。2022年は、レース開幕が遅く、例年であれば8大会あるのが、5大会しかない。3大会目であったため、残り2大会ということは、今年2022年シーズンのレース出場はできないということになってしまった。何とも不完全燃焼となった。
競技規定に不足していた内容とは、車両規定にある「最低地上高」である。最低地上高は9cm以上と定められていて、さらにフロント(ロワーアームサポートプレートとボデーの締結ボルト最下面14cm以上)とリア(リアサスペンションメンバSUB-ASSYとボデーの締結ボルト最下面27cm以上)の最低地上高が定められている。ワンメイクレースとして参加車両全員がひとつの条件でフェアに競技するためには必要な規定であり、またそれを満たさなかった場合の処分もそれは厳格であることは当然である。RECARO RACING TEAMも、モータースポーツをする上で、レース競技をする上で、ルールを厳守することは当たり前のこととして取り組んできた。チームスタッフもドライバーもプロの集団であり、レースへの準備、作業プロセスは熟知している。ゆえになぜこの最低地上高の問題が起きてしまったのか。
十勝レースが開催された9月24-25日の前日金曜日。チームは本レースにエントリーしている4台のBRZをレース車検場へ持ち込んだ。金曜日夕方の公式車検、土曜日の予選、日曜日の決勝に備えて、マシンが車両規定をクリアしているかどうか、任意の車両検査を受けた。というのもサーキットごとに測定環境や測定方法の違いによって測定数値が変わることが多いにある。この十勝ではどうかということを事前に確認しておく必要があった。906号車のみならず他の3台も問題なくクリアした。さらに金曜日の夕方、大会主催の公式車検を受け、それも何の問題もなかった。いよいよ土曜日の予選。そして日曜日の決勝。決勝レース後、上位入賞した車両は、走行後すぐに車両検査が実施される。これは上位入賞車両のみである。他の車両は、全車両対象となる公道車検を受けなければならない。その決勝レース走行後、すぐに行われる公道車検の前の車両検査である。この大会、988号車と906号車の2台が上位入賞を果たし、その対象となった。988号車は全く問題なかった。しかし906号車は、車両規定の最低値高から5mmも不足している結果となった。全く原因がわからない。現車では確認した。故意でないことは明らかだ。今回はたまたま何かの部品が走行中に下がったという状況ではない。ただ下がってしまった。フロント左側の車高が5mm下がっている。それと同時に車両全体の車高が落ちてしまった。
今年からレース車両が新型車に変わった。トヨタはGR86。スバルはBRZ。共にカップカーベーシックという名称で更新された。新型車になっていくつか使用されている部品も異なる。ボディ、フレーム、足回り。それぞれで自分達が把握していないところでマシンが動いている。予測できたかというと難しい。この先、対策があるかというと難しい。チームの4台が共通している状況であれば、見つけることができるであろう。見つけなければならない。ただ4台それぞれ測定結果が異なる。同じ環境でマシンをつくり、同じ部品を使用して、同じ管理をしている。それでもそれぞれに起きていることが異なる。マシンにある個体差を超えている。
起きてしまったこと。起きたことに対する大会側の処分。大会規定で定められた車両と指定・認定部品を使用しての問題。テクニカルな問題に対する大会側のサポート。どれをとってもいわゆるモータースポーツの入口として運営されている「参加型モータースポーツ」というコンセプトとは乖離している。周囲の参加者・関係者も同じ思いである。ただ何をどうすれば改善されるものかは誰もわからない。
ただ車両規定に満たなかったというのは事実である。これは参加者の義務であり、責任である。まずはそことしっかり向き合わなければならない。この2大会出場停止、つまりは来シーズンに向けて、たくさんの時間を与えられたということ。その時間をしっかり使って、チームとして何ができるか、何をすべきか、学び成長する時間にしなければならない。よりチームが強くなるために必要な時間として取り組まなければならない。