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RECAROのPRO RACER RMSは、間違いなくモータースポーツ向け競技用シートの新たな時代の扉を開いた。そのコンセプト、デザイン、そして性能は革新的で、人智の想像をはるかに超えた域であった。サーキットで、ストリートで、RECAROのPRO RACER RMSを使用しているドライバーがいたら、それは「本物を知っている人」である証である。
このRECARO PRO RACER RMSには、体型に合わせて内側のパッドの厚みを調整するオプションが販売されている。パッドの種類は3種類。バックレスト(背もたれ)部分とシートクッション(座面)。そしてもうひとつはサイサポート(シートクッション先端部にある膝裏のサポート)といわれるもの。どのぐらい変化があるかというと、バックレスト部は、脇あたりの厚みが左右それぞれ+10mmになる。シートクション部は、大腿部側面の厚みが左右それぞれ+15mm。10mm〜15mmというと小さな数字に思えてしまうかもしれないけれど、実際にはとてつもなく大きな変化である。これは是非実際の変化を体感して欲しい。
先日、GR86/BRZ Cupに参戦するジェントルマンドライバーからある相談を受けた。ある事情があってレース車両を変更した。以前の車両も、新しい車両も共にRECAROのPRO RACER RMSが装着されている。シートクション部のパッドもオプションに変更されている。これは全く同じである。しかし、スポーツ走行のため運転席に乗り込んだとき、大きな違和感を感じた。「あれ、この太もものパッドって同じですか?」ジェントルマンドライバーは座った時に何か物足りなさを感じた。「もっと狭くて力が入ったように思うんですが、これはちょっと広くて脚がすごく動くように感じます」という。そのためすぐに何か違いがないかチェックした。
するとシートの取り付け位置がドア側に5mmオフセットしていることがわかった。以前の車両は、シートとサイドアダプター(シートとスライドレースを接合するステー)の間に左右それぞれ15mmのスペーサーがあった。この状態が標準である。新しい車両は、コンソール側に20mm、ドア側に10mmとなっていて、ドア側にオフセットされていた。その理由は、アクセルペダルの位置である。ヒール&トゥーがしやすいようにシートの位置をドア側に寄せることで正確性があがることを選択していた。しかしこれによりドライバーの着座位置もドア側に5mmオフセットする。右脚は、アクセルペダルとブレーキペダルを踏み替えながら頻繁に動かすため、この右脚の壁となる側面の壁が5mm手前にあるのと、5mm奥にあるのでは、ドライバーが感じる「ホールド性」に変化が生まれた。つまりシートが、パッドが変化していたのではなく、パッドの位置が、サイドサポートの位置が、オフセットすることで、ペダル操作をしたときの壁の位置が変化していたのである。
もし標準パッドが広いと感じた場合。もしオプションのパッドに変更して広いと感じた場合。あるいはちょっときつくて中間が欲しいなと感じた場合。人は、パッドの広さだけではなく、シートとペダルの位置関係によって感じ方が変わるということを上手に活用すると良い。オプションパッドは左右10mm単位での調整。シート取り付け位置のオフセットは5mm単位で調整可能。これをうまく合わせれば、より細かい調整が可能となる。
ジェントルマンドライバーから学んだこと。まだまだPRO RACER RMSのすごさには奥がありそうだ。本物であればこそ、使う側の知恵によって、その魅力が高まる。
もっと詳しく知りたい方は、ぜひRECAROの正規取扱販売店をご訪問ください。