Motorsport
2021年7月。TOYOTA GAZOO 86/BRZレースのプロフェッショナルシリーズの菅生大会に参加者・関係者がざわつくような選手が初参戦を果たした。
長年、国内モータースポーツのトップカテゴリーにあたるフォーミュラやスーパーGT500で活躍した小暮卓史選手。
ホンダで活躍した選手がこのレースに参加するというのも非常に珍しいケースですが、そもそも小暮選手がまさか参加してくると考えもしなかった。
このレースは、輝かしい実績をもつベテランドライバーから、成長著しい現役の若手ドライバーまでが、市販車ベースのトヨタ86もしくはスバルBRZのナンバー付きワンメイク車両でガチンコのスプリント対決を行うレース。変更できるパーツは限られ、一般公道を走るクルマとほとんど変わらない。タイヤだけはマシンの性能を遙かに凌ぐハイグリップタイヤを履く。わずか計測1周の予選アタックでタイヤ性能のピークを終えてしまうほどだ。
ブレーキ・アクセル・ステアリングの扱い方も独特で、タイヤのグリップの使い方もとても繊細。このレースにしかないドライビング技術が求められる。プロドライバーは、コンマ何秒のブレーキを入れるタイミング、ステアリングを切るタイミング、アクセルの開け方、シフトアップなど、ここしかないというスイートスポットを完璧にマネージメントしながら、とんでもないタイムを叩き出す。
小暮選手は、レース業界でも屈指のクルマ好きで知られている。プロドライバーになる以前の若い頃は、ジムカーナや峠で腕を磨いてきた選手。けしてモンスター級のレースマシンしか知らないドライバーではない。それでも小暮選手の前に86/BRZレースの高い壁が立ちはだかる。国内モータースポーツの頂点を極めた正真正銘のトップドライバーだからこそ、身体に染み付いたレーシングマシンの感性をリセットするのが非常に難しい。それでも小暮選手は、およそ1年と10ヶ月、悩みに悩み抜いた結果、このレースに参戦することを決めた。中途半端な気持ちは一切なく、GT500の時と同じように準備をしなければならないと言う。チームも小暮選手を全力でサポートすると決意を固める。
参戦する以上、狙うは優勝。
それがどれだけ難しいことか、すでに小暮選手は十分理解している。それでも目指す。
RECARO RACING TEAMの小暮選手として頂点を目指す。