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Motorsport

小暮卓史 x RECARO

2025.12.20NEW

RECAROがモータースポーツの活動を続ける理由。TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup 2025シーズンの最終戦が2025年11月29-30日に岡山国際サーキットで開催された。2019年よりRECARO自社のレーシングチームとして活動を続けるRECARO RACING TEAMも参戦した。プロフェッショナルシリーズには909号車の小暮卓史選手。クラブマンシリーズには270号車の江原聖洋選手。この2名のドライバー。2台のSUBARU BRZで挑んだ。

長いようであっという間の2025年シーズン。「今年も結果を残すことは叶わないませんでした。2021年から2人3脚で活動してきた富士スバルの皆さんにはとても申し訳ない。結果で報われることがあるとすれば、何とか期待に応えるきっかけを掴みたかったです」と語るRECARO RACING TEAM代表の前口氏だった。前戦の鈴鹿大会にて903号車の佐々木孝太選手と906号車の近藤翼選手が、他車からの接触を受け、修復不可能なダメージを受けた。そのため最終戦の岡山大会に4台のBRZで挑むプランは叶わなかった。近藤選手と小暮選手に佐々木選手を加えたチームワークは非常に良く、チーム内のコミュニケーションも最高で、互いに切磋琢磨しながら、ひとつでも上の順位を目指す。そういう期待があっただけに鈴鹿大会でのダメージは、非常に大きかった。元々4台での参戦を予定していたため、富士スバルから6名のメカニック。そしてメーカーSUBARUからの派遣メカニックも6名と大所帯で準備をしていた。レース現場での非日常的な経験を楽しみに参加していたディーラーメカニックにとっても2台のBRZというのは一抹の寂しさがあったであろう。

最終戦の岡山大会は、稀にみる気温の低さから、タイヤのウォームアップに関して、参加者全員が余すところなく四苦八苦していた。寒い時期でも強さを発揮するDUNLOPタイヤ。タイヤの芯までウォームアップするのに難しさのあるBRIDGESTONEタイヤ。通常であれば、プロクラスはアウトラップからのアタックという予選になるが、両タイヤメーカーともに、ウォームアップをアウトラップのみでアタックするのか、あるいは2周を使って丁寧に温めていくのか、各チームの戦術が異なる。故に、予選スタートからコースインするタイミングに難しさがあった。アウトラップもアタックラップもクリアで走れるかどうか。異例となったコンディションがレースの面白さを高めていた。RECARO RACING TEAMも予選スタートの内圧とウォームアップの周回数など、チームとドライバーはギリギリまで話し合っていた。

このワンメイクレースは、ナンバー付きの市販車をベースとしている。プロクラスであればタイヤメーカーも認定された複数のメーカーから選択できる。指定部品と認定部品によってマシンのセッティングもアレンジできる。とはいえ国内参加型モータースポーツの代表格である。いわばモータースポーツの入口である。ただフォーミュラやSUPER GT500の現役ドライバーも参戦するほど、そのレベルは国内屈指である。このワンメイクレースで勝つということはレーシングドライバーとしてかなり高いステータスでもある。昨年あたりから、成長著しい若手、今が成熟期ともいえる中堅、そして経験豊富なベテランが、面白いように重なり合い、魅力を増している。それを証明するのが、今年の各レース結果にある。毎戦、優勝者が異なり、誰かが突出するということもなく、DUNLOPとBRIDGESTONEのタイヤ戦争にも圧倒的な差は生まれなかった。平たく言うなら”とにかく面白いシーズン”だった。

とはいえ、その熾烈な争いにRECARO RACING TEAMが加わることは叶わなかった。何かが足りないというレベルではない。すべてが足りていない。結果だけを見ればそうとも言える。「私たちRECARO RACING TEAMは、もちろん何をすれば上位で戦うチームになれるのか、嫌というほどドライバーらと話し合いを重ねた。チーム全員がひとつとなってみんなで必死に戦い続けた。ただやっぱりまだ上にはいけないですね」という前口氏。そして2021年からRECARO RACING TEAMで戦う909号車の小暮卓史選手も「何とかチームのために結果を残したい。自分に足りないものを必死に探しています。ある意味、自分にとっては、GTよりも難しいレースです。レーシングドライバーとして自分に他より優れているものがあるとすれば、その優れているものを発揮しづらいのがこのカテゴリーなのかもしれない」と語る。小暮卓史と言えば、日本のモータースポーツ界で幾度も頂点を極めたレーシングドライバーのひとりである。数多のプロのレーシングドライバーが「自分には追いかけても手に入らない」であろうものを持っているのが小暮卓史であると認めるほどのドライバーである。その小暮卓史選手が、思うような結果に辿り着くことができないのが、このGR86/BRZ Cupという独特なワンメイクレースである。

「我々は勝ちたいという気持ちを強く持ち続けているのは間違いありません。そのためにチーム全員で必死にチャレンジしている。ただ、それが全てではないのも事実である。レースとは勝負事。勝負事である以上、結果がすべてであるのもわかっている。でも、このモータースポーツの活動に挑むことで、もっと大切なことを学んでいる。小暮卓史という超一流のレーシングドライバーから計り知れない多くのことを学んでいる。このワンメイクレースで活動していなければ、小暮卓史というドライバーと共にレースに挑戦できるなんてとても叶わなかった。レーシングドライバーとして超一流なのは言うまでもなく、それ以上に"人"として言葉では伝えることができないほど、眩しいくらい素敵なんです。小暮卓史と一緒にレースができる。小暮卓史と悔しい想いを共有できる素晴らしさ。これはRECARO RACING TEAMの掛け替えのない財産なんです」という前口氏。

モータースポーツの現場では、多くの素晴らしい人に出会うことができ、チームのために、ドライバーのために、全員がひとつになれる、そんな素晴らしい経験を学ぶことができる。強いチームを作ることの難しさ。勝てるチームを作ることの難しさ。どんなに悔しい思いを重ねても前を向いて進み続けること。努力と工夫を重ねながら「何故」を繰り返す。それは企業の事業活動と変わらない。結果がすぐ目の前で突きつけられるというのは、それ以上なのかもしれない。多くの人から温かい声を掛けていただき、助けられ、助け合って、向き合う。その姿がRECAROというブランドが多くの人に信頼されるブランドであり続けるための羅針盤となる。

小暮卓史という超一流のレーシングドライバーとRECAROが共に歩んだ道は確かに存在する。


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