Motorsport
群馬県利根郡みなかみ町にある群馬サイクルスポーツセンター。今から40年前の1983年に自転車競技者の育成を目的として開園したことからロードレースに適した6kmのコースを所有する。ただ現在は、雑誌の取材やモータースポーツ関係者が主催する走行会などとして利用されることが多くなった。元が自転車競技用として作られたことから、道幅が狭かったり、エスケープゾーンのない自然のままの峠道が続くため、かなり難しいコースとなっており、一般の方々というよりも新車の試乗会やプロドライバーによる走行テスト、自動車部品のテストといった用途が主となっている。
2023年5月25日。海外でも活躍した日本を代表するラリードライバー新井敏弘選手とSUPER GTやフォーミュラなどで国内モータースポーツの頂点を極めた小暮卓史選手。このふたりが群馬サイクルスポーツセンターに姿を見せた。実は、ふたりとも群馬県出身のプロドライバー。世代は少し異なるが、ふたりの共通点は「RECARO」であった。
新井敏弘選手は、WRC(世界ラリー選手権)に参戦していたころから現在に至るまで競技車両はすべてRECAROという経歴だ。ドライバーとして最高のパフォーマンスを発揮するためというだけではなく、プロドライバーとして長く競技生活を続けていくために「世界でも最も身体に負担の掛からない競技用シート」としてRECAROを選択している。「ラリーの場合、大会ごとの走行距離がとても長い。競技区間となるスペシャルステージ。その競技区間をつなぐ移動区間となるリエゾン。とにかく1日の走行距離が長いので、競技としても使えて、一般道を走行しても疲れない、身体への負担がないRECAROというのは、自身の競技人生において必要不可欠な選択です」という新井敏弘選手。
一方で、小暮卓史選手はというと、SUPER GT500やフォーミュラに参戦している頃は、さすがに縁もなかったが、2021年よりRECAROのレーシングチームでドライバーを務めている。またプロドライバーになる前からクルマ好きで峠道の走行やジムカーナ競技などに参加していた小暮選手は、RECAROは若い頃からの憧れだったという。「RECAROシートの場合、シートから伝わるクルマの情報量がとても多い。ものすごくクルマの挙動がわかりやすい。情報量が多いということは、それだけドライバーは自身のパフォーマンスを発揮しやすくなり、かつドライビングへの集中力も高まることから、レース後の疲れ方が全く異なります。ドライバーにとっては、とても重要なことです」と小暮卓史選手はいう。
そのふたりが群馬サイクルスポーツセンターで束の間の休日を過ごした。休日といってもピクニックをしていたわけではなく、新井選手が運転するラリー競技車両WRXに同乗。サーキットとは異なるターマック(舗装道路)を走るラリードライバーのドライビング技術を体験したのだった。超ハイグリップタイヤにダウンフォースの効いたレーシングカーと一般道を走るためのラリー車両では、コーナーへのアプローチ、クルマの動かし方、荷重と抜重の仕方、タイヤの使い方など全く異なる。2019年からRECARO RACING TEAMでナンバー付きレース車両の競技「GR86/BRZ Cup」に参戦している小暮選手。このレースは、小暮選手がかつてドライブしてきたガチのレーシングマシンとは異なる。公道も走れる保安基準適合車両のため、どちらかというとラリー競技車両に類するところがある。そのため新井選手がもつラリードライバーとしての運転技術が、何か参考になるのではと考えた交流であった。
群馬が誇るふたりのプロドライバー。その姿はとても眩しく、たくさんの方にお見せする機会でなかったのは残念である。RECAROという共通点を介して、このふたりがこれからも交流する機会が増えるようであれば、群馬県民としても誇らしいかもしれない。